借入がダメというなら
問題集のなかに、ファイナンシャルプランナーが顧客に対して行ったアドバイスで不適切なものはどれかを問う設問がありました。
四つの選択肢のなかで正解(=不適切なもの)は、
初任給を受け取った会社員Aさん(22歳)に対し、「これからは定期的な収入が見込めますので、初任給に借入金を加えた資金を元手として、将来のために高い収益を見込める金融商品による積極的な運用を図るべきです」とアドバイスした。
という選択肢でした。
これが「不適切」な理由として、「借入をしてまでの、積極的な運用をすべきではありません。」と解説しています。
おいおい、とツッコミを入れたくなりました(笑)
というのも、同じ設問の別の選択肢で、
住宅ローンを利用して住宅の購入を検討している会社員のCさん(35歳)に対し、「将来の金利水準やライフプラン上の収支の見通しを十分に検討したうえで住宅ローンを利用することが大切です」とアドバイスした。
というのがあったからです。
ファイナンス理論を少し齧ったことがある人なら、借入すること自体が悪いことではないことは常識です。
投資効率を上げるためにはむしろ必要なものです。
借入ること自体が問題なのではなく、借入をコントロールできなくなるのが問題なのです。
言うまでもなく、多くの人にとって住宅ローンは人生最大の借入です。
一生かけて返済するような巨額の借入をして、住宅に投資するのです。
上記の二つの選択肢にある行動は、本質的には同じことをしようとしています。
額が巨額であり、返済が長期にわたるぶん、住宅ローンの方がリスクが大きいと言えるかもしれません。
にもかかわらず、住宅ローンだけは良しとするところに、 ファイナンシャルリテラシーの欠如を感じます。
住宅ローンのアドバイスをする前に、人生最大の賭けをすることを充分に認識させることが大切なのです。